オレゴンキャンパスに滞在して数日経った頃、 ヴィクトリアは桧山氏にこう交渉しました。 「トシ(私のこと)は、生徒たちの新しい研修観光地をオレゴン州内に開拓にきているんでしょ。だったら私が車で同行する。」 そうなんです。建前上ですが、私は新たな研修観光地の開拓に来ているのです。 毎日、日本の本校に日々の報告をFAX(当時パソコンはまだあまり普及していませんでした)していましたが、 少しは形だけでも開拓をした報告をする必要があったのです。 桧山氏は、ヴィクトリアの熱意に押されて、首を縦に振るしかなかったのです。 私も助かりました。アメリカで車の運転ができる国際免許を取ってこなかったからです。 翌日、ヴィクトリアと2人でキャンパス所有の軽ワゴンで出かけることになりました。 車の中のヴィクトリアはとても上機嫌でした。 自分は、親戚の牧場にあずけられ、そこで育ったこと。 娘は7歳にもかかわらず、とても背が高いことなどを一生懸命話していました。 私も、「いい雰囲気 ![]() なるべく明るくふるまうようにしました。 車は信じられないくらい美しい紅葉の中を、どこまでもまっすぐに進みます。 行先はヴィクトリアに任せたので、 北へ向かっていることはわかったのですが、どこへ向かっているのかわかりませんでした。 すれ違う車もほとんどありません。 アメリカ大陸の大きさを実感しました。 ほぼ直線の道を何時間か走りました。 車は小さな町にさしかかりました。 街というよりは、大きな牧場が集まった集落のようなところです。 ヴィクトリアはその中の1つの牧場の敷地内に車を入れ、 建物の前で車を停めました。 そして一言「ここが私が育った牧場なの。」そう言いました。 ヴィクトリアが牧場の建物の扉をノックすると中から 髭を長く伸ばした190cm近い大男が2人出てきました。 筋肉の上に脂肪が乗った巨体と髭が相まって、 当時のアメリカプロレスの悪役を彷彿とさせる風貌です。 正直本当にビビりました。 ヴィクトリアが「私のいとこたちなの。」と紹介してくれなかったら 本当に逃げ出していたかもしれません。 2人の大男は私を見て「こいつが、ヴィクトリアの新しい彼氏か。」 「日本人?お〜日本人には生で初めて会ったぜ。」 と口々にいいました。 私はただあいまいな笑みを浮かべているしかありませんでした。 本当に日本人的ですよね ![]() そんな私の様子を知ってか知らずか、ヴィクトリアは「トイレ行ってくる。」と言って、 家の中へ消えてしまいました。 男たちは1人になった私に「ちょっとこっち来いや。」と言って外に連れ出しました。 納屋の前まで連れてこられると、そこにはぼろぼろの廃車がありました。 「これに乗れ。」と言って、車に押し込められました。 そのまま湖にでも車ごと沈められるかと思い、本当に心臓がバクバクしました。 大切なヴィクトリアを奪った!?小さな東洋人(174cmですけど・・)を 無きものにしてやる、彼らはそう思っていると本気で考えました。 男の一人が「カメラを貸せ。」といって、私のカメラを奪う!?と おもむろに撮影を始めました。 それがこの写真です。このときの私は本当におびえた顔をしています。 実はこの車は廃車ながら、コルベット(だったと記憶しています)のアンティークの名車だったのです。 遠い日本から来た、いとこの彼氏(と紹介されたみたいです)に名車に乗った記念写真を撮ってくれたのです。 気がつくと、トイレに行っていたヴィクトリアも戻ってきており、 その後ろには男たちの妹らしき、太った女の子もきて笑顔で撮影を眺めていました。 本当はみんな田舎のいい人たちだったのです。 でも誰だって身長190cmの大男2人に連れ出されたら、身の危険を感じるでしょう・・。 その後何時間か牧場に滞在するのですが、もうひとつちょっとびっくりする体験をしました。 馬の世話を手伝ったあと、馬小屋の近くに大きな犬がつながれているのに気付きました。 おとなしい犬のようです。 近くに寄ると甘えて鼻を鳴らすので、 頭を撫でてやっていました。 ヴィクトリアのいとこの女の子が近づいてきて 「そのオオカミ可愛いでしょ。」といいました。 一瞬何のことかわからなかったのですが、良く見て気付きました。 犬に似ていますが、犬ではないのです。犬よりも力強いですし、 顔も精悍です。たしかにオオカミのようでした。 昔、父親が近くの森で、赤ん坊だったオオカミを拾ってきて育てているのだそうです。 そのため、犬同様に人間になついているそうです。 あとで調べてみると、アメリカオオカミの野生種は1980年代に絶滅したと言われています。 (人工飼育のアメリカオオカミはいます。) この出来事は1994年のことですが、もしかしたら生き残っていたのがいたのかもしれません。 あるいはまだ野生種がいるオオカミの一種・コヨーテか、コヨーテとアメリカオオカミの混血かもしれません。 いずれにせよ彼女は「ウルフ(オオカミ)。」と言っていましたし、 犬の血は入っていないとも言っていました。 とにかく貴重な経験だったのは間違いないようです ![]() オオカミは、ネイティブ・アメリカンの聖なる象徴の一つでもあります。 このオオカミとの出会いも私と大昔のアメリカ大陸をつなげる象徴だったのかもしれません。 以下次回お楽しみに ![]() |
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